2016.08.18

歯科臨床には基礎科学の知識はいらない!?

う蝕原因菌が未同定であった昭和40年代から歯学教育に携わり、約43年間学生教育ばかりでなく多くの臨床医の方々と交流し、意見を聞く機会があった。

“国民病う蝕”対策の歯科医師養成のため幾つもの私立歯科大学が新設された。新設大学では教員数確保のため異分野出身者を多く採用したが、自分もその一人で、今では当時の熱気を知る数少ない研究者の一人かも知れない。国内外でう蝕原因菌研究が活発に行われ、乳酸菌原因説はくつがえされた。その一翼を担うことができたことは研究者としてかけがえのない経験であった。その後、う蝕ワクチン、非・抗う蝕性甘味料や多糖合成酵素阻害剤の開発など次から次へとう蝕撲滅に向けた研究が行われた。

そんな折り、故池田正教授(日本大学松戸歯学部・細菌学)の鞄持ちとして某歯科医師会講演に同行させていただいた。先生はう蝕撲滅が近いことを熱心に講演された。講演終了後、会員の方がやおら手を挙げ「そんな研究やめてください。う蝕がなくなったらわれわれは食えなくなる!」との発言があった(詳細は日本歯科医師会雑誌67巻、11号参照)。
原因菌を究明し感染症減少を使命とするわれわれ細菌学研究者にとっては、信じがたい発言であった。

数十年前、う蝕減少後に歯科界に何が起こるか既に気づいていたはずだ!

haisya_drill

【執筆者紹介】

落合 邦康 先生(日本大学 特任教授)

-経歴-
1975年4月 日本大学松戸歯科大学(現松戸歯学部)助手
1987年4月 日本大学講師
2000年4月 明海大学教授(歯学部)
2005年4月 日本大学教授(歯学部)
2016年4月 日本大学特任教授

-所属学会-
International Association for Dental Research
日本無菌生物ノートバイオロジー学会
日本消化器免疫学会
日本歯周病学会
腸内細菌学会
日本免疫学会
歯科基礎医学会
日本細菌学会

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